させんバンカーの 独り言

ある日、突然左遷された元銀行員の日常

左遷、そして放逐

させんバンカー521です。

銀行を左遷され追い出されることが決まった後、職場を出ていくまでにしばらく期間が空きましたが、この期間は辛く厳しい時間でした。

左遷されることが本人に伝わる前に、女性社員たちに情報が漏れていました。後で聞いた話では、役員たちが、女性職員達と飲むときのネタにしたそうです。女性職員に、自分たちはこの組織で誰よりも早く人事情報を知りうる立場にあること、その特権階級ぶり、自分たちとはこうして仲良く飲んどいたほうが良いよと力を誇示したかったのでしょう。役員のうち一人は人事部長という最も情報漏えいに敏感であるべき立場の人なのにこの有様。この程度の人が役員になる組織のモラルハザードぶりが凄まじい。

左遷が正式発表される前からこの有様なので、正式発表されても内部的には既知の事実でしかありませんが、他の支店の人達からのお悔やみ電話や励ましメールが解禁となり、また、取引先等対外的なご挨拶回りがスタートします。左遷される本人にとって、出世栄転の挨拶ではなく左遷追放される挨拶をしなければならないことは、転勤=出世であった銀行員としてはこの上なく辛く悲しい作業でした。もうそこに銀行員としての誇り、プライドはありません。挨拶の言葉に只々辛い思いを漏らす惨めな銀行員の残骸があるだけです。

内部、外部の送別会もしんみりしたものでした。既に組織のヒエラルキーから追い出され、力をなくした人には、尊敬も恩も媚もおべんちゃらも必要ないので、会話も笑いも少なく只々送別した事実を残す儀式でしかありません。でも、自身が確かにこの組織に存在し仕事をしていたことを噛みしめることができる時間となりました。

勤務最終日まで恥を忍んで出勤し、ようやく最終日です。物理的な後片付け、手続きを終え、各部署に挨拶に回ってバタバタの終活。今日が銀行員最終日。明日からもう銀行員ではないと思うと、結構苦労した30年間はあっという間だったとうそぶける気にもなります。

まだ左遷の精神的傷は生々しく、自分を追い込んだこの会社や役員達へのどす黒い怒りや恨みはいや増しつつ、片やこれから就く全く異業種の職場でどう生活していけるのか将来への不安も大きく、時に身を任せつつ次のことを考えながら必死に生活していこうとの覚悟を繰り返し繰り返し呪文のように唱え自分に言い聞かせることしかできませんでした。

この局面を乗り越えて、あの役員達になんとか一矢報いたい。それだけは忘れない。その思いでした。