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育児・介護休業法改正法が段階的に施行されます~育児・介護休業取得のススメ

育児・介護休業法改正法が段階的に施行されます~育児・介護休業取得のススメ

令和4年4月1日以降、段階的に育児介護休業法改正法が施行されます。子育て世代の夫婦とその親の2世代が一つ屋根の下に同居する時代から、核家族化が進み生活様式が変化して子育て世代の夫婦だけ1世代で生活する世帯が増えたこともあり、妻が妊娠・出産を迎え育児をしていくにあたっても、様々な事情から親世代の支援や協力を得ることがでず夫婦二人だけで協力して解決していかねばならない状況が発生しやすくなっていると思われます。近年、新型コロナ感染症の拡大等が後押しして急速にテレワークが普及し、働き方改革が大きく進展したこと等もあり、妻自身や夫が就業を抑え、協力して不安なく妊娠・出産・育児をこなしていくニーズも高まっていると思われます。近々ご自身があるいは配偶者が出産を控えている方、あるいは近い将来にこうした環境となることが予想される方も、今回の育児・介護休業法改正法の改正をきっかけに、積極的に育児・介護休業制度を活用していくことを検討してもてもよろしいのではないでしょうか。

育児・介護休業法改正法の施行スケジュールと概要は下記の通りです。

1.令和4年4月1日より、企業の経営者は、従業員が育児休業を取得しやすい雇用環境を整備する必要があります。具体的には、①育児休業・産後パパ育休に関する研修の実施 ②育児休業・産後パパ育休に関する相談体制の整備(相談窓口や相談対応者の設置) ③自社の労働者の育児休業・産後パパ育休取得事例の収集・提供 ④自社の労働者への育児休業・産後パパ育休制度と育児休業取得促進に関する方針の周知の、①~④のいずれか(複数が望ましい)を実施する必要があります。併せて、(本人または配偶者の)妊娠・出産の申し出をした労働者に対し、概ね出産予定日の1か月前までに、面談(オンライン可)、書面、FAX、電子メール等の手段で、個別の周知、意向確認が必要となります。周知する内容としては、育児休業・産後パパ育休に関する制度(制度の内容など) 、育児休業・産後パパ育休の申出先、育児休業給付に関する制度の内容等、労働者が育児休業・産後パパ育休期間において負担すべき社会保険料の取扱い等です。

2.また、令和4年4月1日から、有期雇用労働者の育児・介護休業を取得できる要件について、「引き続き雇用された期間が1年以上」という要件が削除され、育児休業は「1歳6か月までの間に契約が満了することが明らかでない」こと、介護休業は「介護開始予定日から93日経過日から6か月を経過する日までに契約が満了することが明らかでない」ことのみが要件となります。

3.令和4年10月1日以降は、更に大きな制度改正が施行されます。①産後パパ育休(出生時育児休業)の創設と②育児休業取得回数の変更です。

①産後パパ育休(出生時育児休業)とは、配偶者が出産する夫が、子の出生後8週間以内に4週間まで、2回まで分割して取得可能な育児休業です。②育児休業の取得回数の変更とは、1歳までの育児休業を2回まで分割して取得し、特に必要と認められる場合の 1歳以降(最長、対象となる子が2歳となるまで)の育児休業を、期間の途中で配偶者と交代して育児休業を開始できるようにする観点から、配偶者の休業の終了予定日の翌日以前の日を、本人の育児休業開始予定日とすることができるという内容です。これれの改正により、例えば、配偶者が出産する夫が、子の出生後8週間以内に4週間まで、2回に分割して産後パパ育休を取得した後、対象の子が1歳になるまで更に2回に分けて育児休業を取得することが可能となります。出産後復職した配偶者と交代で育児休業を取得することも可能です。また、子が1歳を超えても、保育園が決まらない等の特殊事情がある場合には、1歳を超え1歳6か月までの間に1回だけ育児休業を取得することが可能です。更に1歳6か月時点でも特殊事情が継続している場合には、1歳6か月を超え2歳までの間に1回だけ育児休業を取得することが可能です。

このように、育児休業は対象となる子が最長2歳となるまで最長2年間取得可能となります。但し、育児休業取得にあたって下記の点について十分留意する必要があります。

(留意点1)雇用される企業の就業規則等によりまちまちですが、育児・介護休業取得期間中は、企業に賃金の支払い義務はありません。すなわち無給の休業となります。但し、受給資格を満たしていれば、雇用保険から育児休業給付を受給することができます。受給金額は、原則として休業開始時の賃金の67%(180日経過後は50%)となります。更に、育児休業期間中は社会保険料の免除を受けることができます。一定の要件(その月の末日が育児休業(出生時育児休業を含む、以下同じ)期間中である場合(令和4年10月以降はこれに加えてその月中に14日以上 育児休業を取得した場合、賞与に係る保険料については1か月を超える育児休業を取得した場合)を満たしていれば、育児休業をしている間の社会保険料が被保険者本人負担分及び事業主負担分ともに免除されます。

(留意点2)雇用される企業の就業規則等によりまちまちですが、育児・介護休業取得期間は、退職金等の算定根拠となる勤続継続年数には加算されますが、昇給・昇格や賞与算定等の基礎となる勤続年数等には加算されない場合があります。これは、育児・介護休業を取得しない従業員との公平性を保つための措置と考えられ、ある意味やむを得ないものとも考えられます。

育児・介護休業制度は、これまで数年にわたり幾度となく改正を繰り返してきた経緯から非常に複雑で理解することが難しい規定となっており、不明な点があれば必ず人事担当部署の担当者等に十分に確認することが必要です。育児・介護休業を取得したが、思ったように昇給・昇格できなかった等、思い違い等により思い描いた社会人人生を送ることができなかった、といったことにならないよう、自身が勤務する企業の就業規則等を十分に確認することが必要です。そのうえで、育児・介護休業制度を有効に活用しては如何でしょうか。